冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「十二月」『十二月 上野の北は 静かなり』「正岡子規」の俳句のイメージイラスト画像 季語紹介シリーズ
📚 目次へ

冬に触れる、やさしい季語たち

冬の訪れとともに、
空気は澄み、
光は静かにやわらぎます。
「立冬」から「師走」まで、
季節の変わり目を
彩る言葉を集めました。
有名俳人の句を通して、
冬の情景と心のぬくもりを
感じてみましょう。

冬の時候季語12選vol.1

季語『立冬』

『立冬』の意味

二十四節気のひとつで、
暦の上で冬の始まりを告げます。
日差しのぬくもりの中にも、
冷たい風が混じり始めるころ。
木々の葉が散り、空気が澄んでいく、
季節の移ろいを感じさせる
冬の入り口の時候季語です。

『立冬』のコラム

立冬は、秋から冬への橋渡しの時期で、
一年の終わりを意識し始める節目です。
俳句では、静けさやあたたかさの対比、
日常の変化を繊細に詠む題材として
用いられます。
寒さに備えながらも、
穏やかな季節の始まりを伝える言葉です。

『立冬』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「立冬」『あらたのし 冬たつ窓の 釜の音』「上島鬼貫」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:あらたのし 冬たつ窓の 釜の音
読み:あらたのし ふゆたつまどの かまのおと
俳人名:上島鬼貫(うえじま おにつら)
要約:冬の始まりを告げる朝、
   窓辺から釜の湯気が立ちのぼる。
   その音に、寒さとともに訪れる
   新しい季の息吹を感じる。
   ぬくもりの中に静かな喜びを
   そっと見いだした一句です。

季語『初冬』

『初冬』の意味

冬に入ったばかりの時期を指し、
まだ寒さがやわらかく、
木々にわずかに秋の名残が残ります。
澄んだ空気とともに、
静かな季節の始まりを
感じさせる言葉です。
俳句では、穏やかな光や風を描き、
冬への移ろいを表します。

『初冬』のコラム

初冬は、秋の終わりと
冬の始まりが交差する時期。
人の暮らしや自然の変化を
穏やかに映します。
冬ざれほどの厳しさはなく、
心に残るぬくもりを詠む句も多いです。
季節のあわいを描くことで、
移ろいの美を感じさせる季語です。

『初冬』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「初冬」『初冬や 日和になりし 京はづれ』「与謝蕪村」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:初冬や 日和になりし 京はづれ
読み:はつふゆや ひよりになりし きょうはずれ
俳人名:与謝蕪村(よさ ぶそん)
ことばあそびの詩唄で蕪村の句をもっと
要約:初冬の京の郊外、
   澄んだ空の下に穏やかな日差しがさす。
   冷えゆく季節の中にも、
   やわらかなぬくもりが漂う。
   静かな光景に、冬を迎える
   心のゆとりが感じられる一句です。

季語『十一月』

『十一月』の意味

陰暦で冬の初めにあたる月で、
木の葉が落ち、北風が吹き始めます。
日脚が短くなり、
朝夕の冷え込みが増す頃。
秋の名残を残しつつも、
冬の訪れを実感する時期です。
静けさとぬくもりが交錯する、
季節の変わり目を示す時候季語です。

『十一月』のコラム

十一月は、一年の終盤を意識する月。
人々は冬支度を整え、
心も少しずつ静まっていきます。
俳句では、落葉や夕暮れ、
炉開きなどの情景と
結びつけて詠まれます。
日常の中にある寂寥と安らぎを
表現する季語です。

『十一月』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「十一月」『日暮れ見ぬ 十一月の 道の辺に』「原石鼎」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:日暮れ見ぬ 十一月の 道の辺に
読み:ひぐれみぬ じゅういちがつの みちのべに
俳人名:原石鼎(はら せきてい)
要約:晩秋の夕暮れ、
   静かな道のほとりで日が沈む。
   秋から冬へと移ろう気配の中、
   人の気配も薄れ、光も遠のく。
   その一瞬の寂しさに、
   季節の深まりをしみじみと
   感じさせる句です。

季語『冬』

『冬』の意味

一年を四季に分けたうちの、
寒さの最も厳しい季節を指します。
大地が眠りにつき、
木々は葉を落として静まり返ります。
生命の息づかいが内にこもるこの時期は、
忍耐と静寂を象徴する
代表的な時候季語です。

『冬』のコラム

冬は、自然が沈黙し、
人の心も内省に向かう季節です。
俳句では、寒さや白の世界に
清らかな美を見いだします。
厳しさの中にあるあたたかさ、
静けさの中に宿る生命の力を詠む、
深い余情を持つ季語です。

『冬』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「冬」『石枯れて 水しぼめるや 冬もなし』「松尾芭蕉」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:石枯れて 水しぼめるや 冬もなし
読み:いしかれて みずしぼめるや ふゆもなし
俳人名:松尾芭蕉(まつお ばしょう)
ことばあそびの詩唄で芭蕉の句をもっと
要約:石は乾き、
   流れゆく水はその勢いを失う。
   自然が静まり返り、
   季節の終わりが近づいている。
   しかしまだ冬は遠く、
   生命の余韻がかすかに息づく
   情景を詠んだ句です。

季語『冬ぬくし』

『冬ぬくし』の意味

冬の日差しや風がやわらかく、
思いのほか温かく
感じられる様子を指します。
厳しい寒さの中にも、
ほっとする穏やかさが
あるときに使われます。
冬の自然が見せる優しい表情を伝える、
ぬくもりのある時候季語です。

『冬ぬくし』のコラム

冬ぬくしは、
寒さの中の安らぎを表す言葉。
日差しや人の気配に、
ほのかな温もりを
感じる情景に使われます。
俳句では、厳冬の静けさの中に
やさしい光を差し込ませるように詠まれ、
冬の柔らかな一面を伝える季語です。

『冬ぬくし』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「冬ぬくし」『冬ぬくし 日当たりよくて 手狭くて』「高浜虚子」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:冬ぬくし 日当たりよくて 手狭くて
読み:ふゆぬくし ひあたりよくて てぜまくて
俳人名:高浜虚子(たかはま きょし)
ことばあそびの詩唄で虚子の句をもっと
要約:冬の陽射しがやわらかく差し込み、
   小さな部屋にあたたかさが満ちる。
   手狭ささえも心地よく感じるのは、
   静かな幸せがそこにあるから。
   何気ない日常の中のぬくもりを
   やさしく描いた一句です。

季語『冬ざれ』

『冬ざれ』の意味

冬の寒さが深まり、
草木が枯れ、
景色が荒涼として見える様子を指します。
風が冷たく、色彩を失った野山には、
静けさと寂しさが漂います。
自然の厳しさを映す、
冬の代表的な時候季語です。

『冬ざれ』のコラム

冬ざれは、
もののあわれを感じさせる言葉です。
人の暮らしや心の内にも、
静かな孤独や余情を映します。
俳句では、枯木や空の広がりとともに、
季節の深まりを描く
題材として用いられます。
寒々とした中に美を見いだす季語です。

『冬ざれ』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「冬ざれ」『冬ざれの 厨に赤き 蕪かな』「正岡子規」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:冬ざれの 厨に赤き 蕪かな
読み:ふゆざれの くりやにあかき かぶらかな
俳人名:正岡子規(まさおか しき)
ことばあそびの詩唄で子規の句をもっと
要約:寒さにすっかり荒れた冬の台所、
   その中でひときわ鮮やかに光る赤い蕪。
   侘しさの中に小さな生命の輝きを見つけ、
   季節の寂寥とあたたかさを
   対比させた句です。

季語『冬の日』

『冬の日』の意味

冬の季節に照る太陽や、
その日の光を指す時候季語です。
日差しは弱く、低い位置から
斜めに差し込むのが特徴。
寒さの中にも
ほのかなぬくもりを感じさせ、
静かな時間の流れを映します。
明るさと寂しさが同居する季語です。

『冬の日』のコラム

冬の日は、
光と影の対比を際立たせる言葉。
弱々しい日差しが、
人の心にやさしく
触れるように描かれます。
俳句では、安らぎや静けさ、
時の流れのゆるやかさを
詠む題材として親しまれます。
冬の光がもたらす
穏やかな情景を伝える季語です。

『冬の日』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「冬の日」『冬の日や 茶色の裏は 紺の山』「夏目漱石」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:冬の日や 茶色の裏は 紺の山
読み:ふゆのひや ちゃいろのうらは こんのやま
俳人名:夏目漱石(なつめ そうせき)
要約:冬の日差しに照らされた風景、
   手前の茶色い土や家並みの奥に、
   深い紺色の山が静かにそびえる。
   枯れた色の中にある力強い対比が、
   冬の澄んだ空気と自然の美を
   際立たせる句です。

季語『小春』

『小春』の意味

晩秋から初冬にかけての、
穏やかで暖かな晴れの日を指します。
「小春日和」とも呼ばれ、
冬の始まりに一時的に訪れる陽気です。
春を思わせるやわらかな気候に、
人々はほっと心をゆるめます。
冬の季節をやさしく告げる時候季語です。

『小春』のコラム

小春は、冬の冷たさの中にある
ぬくもりと安らぎを象徴します。
俳句では、柔らかな日差しや、
静かな暮らしの一場面を
映して詠まれます。
過ぎゆく秋への名残と、
冬の始まりの希望をつなぐ言葉として、
古くから愛されています。

『小春』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「小春」『玉の如き 小春日和を 授かりし』「松本たかし」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:玉の如き 小春日和を 授かりし
読み:たまのごとき こはるびよりを さづかりし
俳人名:松本たかし(まつもと たかし)
要約:やわらかな陽ざしに包まれた小春日和、
   それはまるで宝玉のように尊く美しい。
   寒さの合間に与えられた一日のぬくもりを、
   感謝とともに静かに受けとめる。
   自然の恵みを素直に喜ぶ句です。

季語『霜月』

『霜月』の意味

陰暦の十一月を指し、
霜が降り始める季節である
ことから名づけられました。
朝晩の冷え込みが厳しくなり、
冬の訪れを実感する頃です。
木々が葉を落とし、
空気が澄みわたるこの時期は、
静けさを深める時候季語です。

『霜月』のコラム

霜月は、晩秋から冬へと移る節目の月。
田畑は休みに入り、
人々は冬支度を整えます。
俳句では、霜や夜寒と結びつけて詠まれ、
季節の静まりや孤独を表現します。
寒さの中にもぬくもりを求める心情を、
やさしく映す季語です。

『霜月』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「霜月」『霜月や 日ごとにうとき 菊畑』「高浜虚子」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:霜月や 日ごとにうとき 菊畑
読み:しもつきや ひごとにうとき きくばたけ
俳人名:高浜虚子(たかはま きょし)
ことばあそびの詩唄で虚子の句をもっと
要約:霜月の冷え込みが深まり、
   かつて華やいだ菊の畑も
   次第に寂しくなる。
   日ごとに人の足も遠のき、
   花も静かに時を終えてゆく。
   季節の移ろいと無常の美を
   しみじみと詠んだ一句です。

季語『十二月』

『十二月』の意味

一年の締めくくりの月であり、
寒さがいよいよ本格的になる頃です。
日が短く、
街には年の瀬の気配が漂います。
人々は新年を迎える準備を進め、
慌ただしさと静けさが入り混じります。
冬の深まりと共に時の流れを感じる、
時候季語です。

『十二月』のコラム

十二月は、別名「師走」とも呼ばれ、
僧侶までもが走るほど
忙しい月とされます。
俳句では、静寂の中に動きを
見いだす題材として用いられます。
寒風の中に灯る灯りや、
人の往来に季節の温もりを重ね、
一年を締めくくる余情ある季語です。

『十二月』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「十二月」『十二月 上野の北は 静かなり』「正岡子規」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:十二月 上野の北は 静かなり
読み:じゅうにがつ うえののきたは しずかなり
俳人名:正岡子規(まさおか しき)
ことばあそびの詩唄で子規の句をもっと
要約:年の瀬の上野、
   街の喧騒から離れた
   北のあたりは静まり返る。
   冬の澄んだ空気の中に、
   過ぎゆく一年への思いが
   しっとりと漂う。
   静寂の中にある時間の深さを
   穏やかに描いた一句です。

季語『冬至』

『冬至』の意味

二十四節気のひとつで、
一年のうちで昼が最も短く、
夜が最も長い日を指します。
古来より太陽の力が
再び強くなり始める節目とされ、
かぼちゃを食べ、ゆず湯に入るなど、
無病息災を祈る風習が残ります。

『冬至』のコラム

冬至は、
陰が極まり陽に転ずる日とされ、
再生や希望の象徴とされています。
俳句では、静けさの中に
光の復活を感じさせる題材として
詠まれます。
寒さの底にあって、
新しい季節への兆しを映す、
意味深い時候季語です。

『冬至』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「冬至」『冬至の日 しみじみ親し 膝に来る』「富安風生」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:冬至の日 しみじみ親し 膝に来る
読み:とうじのひ しみじみしたし ひざにくる
俳人名:富安風生(とみやす ふうせい)
ことばあそびの詩唄で風生の句をもっと
要約:一年で最も日が短い冬至、
   やわらかな陽のぬくもりが膝に届く。
   寒さの中にある温かさを
   しみじみと感じながら過ごすひととき。
   静かな季節の慈しみを詠んだ一句です。

季語『師走』

『師走』の意味

陰暦の十二月を指し、
一年の終わりを迎える月です。
名の由来は、僧侶(師)までもが
走り回るほど忙しい
という説があります。
街には年の瀬の慌ただしさが漂い、
新年を迎える準備に追われる頃。
冬の締めくくりを告げる時候季語です。

『師走』のコラム

師走は、時間の流れを最も強く感じる月。
人々は去りゆく年を惜しみ、
新しい年への期待を抱きます。
俳句では、静寂の中の動きを描き、
灯や風、雪などに心の機微を託します。
慌ただしさの奥にある静けさを
映す季語です。

『師走』の例句をご紹介

冬の時候季語12選vol.1-有名俳人の句で知る季節のことば「師走」『旅寝よし 宿は師走の 夕月夜』「松尾芭蕉」の俳句のイメージイラスト画像

俳句:旅寝よし 宿は師走の 夕月夜
読み:たびねよし やどはしはすの ゆうづきよ
俳人名:松尾芭蕉(まつお ばしょう)
ことばあそびの詩唄で芭蕉の句をもっと
要約:年の瀬の旅先、
   宿の窓から見える夕月が
   やさしく照らす。
   寒さの中にも心落ち着く静けさがあり、
   旅の疲れをそっと癒してくれる。
   師走の情緒と孤独のやすらぎを
   繊細にとらえた一句です。

まとめ

冬の時候季語は、
静けさや寒さの中に
ある温もりを伝えます。
立冬から師走までの言葉には、
季節の移ろいと
人の心の機微が宿ります。
俳句を通して、
冬の深さとやさしさを
感じてみましょう。

関連リンク

📷 Instagramアカウントへ(@HaikuEchoes_575)
🏡 わたぼうし詩小径トップへ戻る
🪷 ことばあそびの詩唄 メインサイトはこちら