冬に触れる、やさしい季語たち
冬の空は、澄みきって静か。
月や星、風や雲に、
季節の息づかいが宿ります。
「冬日」や「寒風」など、
冬を照らす天文のことばを集めました。
有名俳人の句とともに、
冬の光と空の情景を味わいましょう。
冬の天文季語12選vol.1
季語『冬日』
『冬日』の意味
冬の季節に照る太陽を指し、
弱くやわらかな光が特徴です。
日差しは低く、斜めに射すため、
影が長く伸びて見えます。
寒さの中にもほのかな
あたたかさを感じさせ、
静かなぬくもりを伝える
冬の天文季語です。
『冬日』のコラム
冬日は、
寒さの中で輝く光の象徴です。
そのやさしい明るさは、
冬の寂しさをやわらげるように
降り注ぎます。
俳句では、光と影の対比を通して
静けさや希望を描く
題材として詠まれます。
淡い光が心を照らす季語です。
『冬日』の例句をご紹介

俳句:大空の 片隅にある 冬日かな
読み:おおぞらの かたすみにある ふゆびかな
俳人名:高浜虚子(たかはま きょし)
→ことばあそびの詩唄で虚子の句をもっと
要約:広々とした冬空の片隅に、
静かに光る太陽を見上げた一句。
弱くも確かな冬の日差しに、
季節の静けさと生命の
あたたかさを感じさせます。
季語『冬晴』
『冬晴』の意味
冬の澄んだ空に
広がる晴天を指します。
空気が乾き、
青さがいっそう
際立つのが特徴です。
冷たい風が吹く中でも、
日の光がやさしく感じられます。
清らかで張りつめた
空気を映し出す、
冬を代表する天文季語です。
『冬晴』のコラム
冬晴は、
厳しい寒さの中にある
明るさと希望を
感じさせる言葉です。
俳句では、
静寂の空や遠くの山並みを描き、
冬の透明な美しさを表現します。
凛とした青空に差す光は、
寒さの中にも生命の息づきを
感じさせる季語です。
『冬晴』の例句をご紹介

俳句:家一つ 畑七枚 冬日和
読み:いえひとつ はたななまい ふゆびより
俳人名:小林一茶(こばやし いっさ)
→ことばあそびの詩唄で一茶の句をもっと
要約:穏やかな冬の日、
小さな家と畑が
七枚並ぶのどかな景色。
寒さの中にもぬくもりがあり、
素朴な暮らしの幸せが
静かに感じられます。
季語『冬早』
『冬早』の意味
冬に入ったばかりの頃を指し、
空気が澄み、
風がまだやさしい季節です。
陽射しにわずかな
あたたかさが残り、
自然が静かに冬の姿へと
変わり始めます。
晩秋の余韻を残しながら、
季節の移ろいを
感じさせる時期の季語です。
『冬早』のコラム
冬早は、
冬立ちの静けさと
新鮮さを表す言葉。
景色はまだ色をとどめ、
人の心にも穏やかさが残ります。
俳句では、冷たさの中に
柔らかな光を
見いだす情景として詠まれます。
冬の始まりを
やさしく告げる季語です。
『冬早』の例句をご紹介

俳句:山深き 瀬に沿ふ道の 寒早
読み:やまふかき せにそうみちの かんひでり
俳人名:飯田蛇笏(いいだ だこつ)
→ことばあそびの詩唄で蛇笏の句をもっと
要約:山あいを流れる瀬のそばの道に、
冬の訪れが早くも感じられる情景。
冷たい空気と静寂の中で、
自然が季節の移ろいを告げています。
季語『冬の月』
『冬の月』の意味
冬の夜空に浮かぶ
月を指す季語で、
澄みきった空気の中で
ひときわ明るく冴え渡ります。
冷たく静かな光は、
心を引きしめるような
清らかさを持ちます。
孤高で透明な輝きを放つ、
冬を象徴する天文季語です。
『冬の月』のコラム
冬の月は、
光と影の対比を際立たせ、
孤独や静けさを映す題材です。
俳句では、寒気の中にある
澄んだ美や
心の静謐を詠みます。
その凛とした光は、
冬の夜を照らす
希望の象徴として、
古くから愛されてきました。
『冬の月』の例句をご紹介

俳句:寒月や 僧に行き合ふ 橋の上
読み:かんげつや そうにゆきあう はしのうえ
俳人名:与謝蕪村(よさ ぶそん)
→ことばあそびの詩唄で蕪村の句をもっと
要約:寒々とした月の光の下、
橋の上で僧と
すれ違う瞬間を描いた句。
静かな夜気の中に、
人と人との一瞬の交わりと、
冬の厳かな気配が漂います。
季語『冬の星』
『冬の星』の意味
冬の澄んだ夜空に
輝く星々を指す季語です。
空気が乾いて透明度が高く、
星の光がいっそう
冴えわたります。
厳しい寒さの中、
瞬く星々は静けさと
神秘を感じさせます。
冬の夜の清らかな輝きを表す
代表的な天文季語です。
『冬の星』のコラム
冴えた光の中に、
人の心の強さや
儚さが重なります。
俳句では、
夜空の広がりとともに、
静かな宇宙の深みを
詠む題材として親しまれます。
凍てつく空に光る星が、
冬の詩情を深めます。
『冬の星』の例句をご紹介

俳句:冬の星 らんらんたるを 怖れけり
読み:ふゆのほし らんらんたるを おそれけり
俳人名:富安風生(とみやす ふうせい)
→ことばあそびの詩唄で風生の句をもっと
要約:冬の夜空に強く輝く星の光を見上げ、
そのあまりの冴えと静けさに
畏怖の念を抱いた一句。
自然の美しさと厳しさが交錯し、
人の小ささを感じさせます。
季語『凩』
『凩』の意味
晩秋から初冬にかけて吹く、
木の葉を吹き散らす
冷たい風を指します。
冬の訪れを告げる風であり、
樹々を裸にし、
季節の移ろいを知らせます。
寂しさとともに、
自然の厳しさを感じさせる
代表的な冬の天文季語です。
『凩』のコラム
凩は、
冬の始まりを告げる風として、
古くから多くの俳人に
詠まれてきました。
冷たく荒々しい風の中にも、
どこか人の情を映します。
俳句では、
音や動きで寒さを伝え、
自然と心の揺らぎを
重ね合わせる
印象的な季語です。
『凩』の例句をご紹介

俳句:凩の 果はありけり 海の音
読み:こがらしの はてはありけり うみのおと
俳人名:池西言水(いけにし ごんすい)
要約:吹き荒れる木枯らしの先に、
海の音が聞こえてくる情景を詠んだ句。
風の勢いが静まるとともに、
自然の広がりと静けさが感じられ、
冬の終わりの余韻を伝えています。
季語『冬の雲』
『冬の雲』の意味
冬の空に広がる雲を
指す季語です。
厚く重たく垂れこめ、
空の低さや寒さを
いっそう際立たせます。
陽の光を遮り、
一日中どんよりとした天気が
続くことも多いです。
静けさと冷たさを感じさせる、
冬特有の天文季語です。
『冬の雲』のコラム
冬の雲は、
季節の重みと時間の静まりを
象徴します。
その灰色の層の奥に、
かすかな光が差す瞬間に
ぬくもりを覚えます。
俳句では、
空の広がりや陰影を通して、
人の心の移ろいを映す
題材として親しまれます。
冬の空気を
包み込むような季語です。
『冬の雲』の例句をご紹介

俳句:冬雲は 薄くもならず 濃くもならず
読み:ふゆぐもは うすくもならず こくもならず
俳人名:高浜虚子(たかはま きょし)
→ことばあそびの詩唄で虚子の句をもっと
要約:冬の空に浮かぶ雲が、
濃くも薄くも変わらず
静かに漂う様子を詠んだ句。
季節の冷たさとともに、
動きのない空の静寂が広がり、
冬の落ち着いた時間を感じさせます。
季語『寒風』
『寒風』の意味
冬に吹く冷たい風を指し、
肌を刺すような
厳しさを感じさせます。
北から吹きつける風は、
木々を揺らし、]
空気を澄ませます。
人々の暮らしにも寒さを届け、
季節の深まりを知らせる
代表的な冬の天文季語です。
『寒風』のコラム
寒風は、自然の力強さと
人の忍耐を象徴する季語です。
俳句では、
風の音や体感を通して、
冬の厳しさや静けさを描きます。
冷たさの中にも清々しさがあり、
冬の空気の透明感を
生き生きと伝える言葉です。
『寒風』の例句をご紹介

俳句:寒風を 来し目に少し 涙ため
読み:かんぷうを こしめにすこし なみだため
俳人名:星野立子(ほしの たつこ)
要約:冷たい風を受けながら歩いてきた目に、
自然と涙がにじむ情景を詠んだ句。
冬の厳しい寒さと、
そこに生きる人の
繊細な感覚を映し出し、
凛とした季節の気配を伝えています。
季語『北颪』
『北颪』の意味
冬に山から吹きおろす
北寄りの風を指します。
乾いた冷気を含み、
里や町に冬の訪れを知らせます。
空気を澄ませ、
木々を揺らすその風は、
厳しい寒さの象徴でもあります。
自然の息づかいを感じさせる、
代表的な冬の天文季語です。
『北颪』のコラム
北颪は、
山から吹く冷風として、
古くから人々の生活に
影響を与えてきました。
俳句では、冬の静寂や
凛とした空気を
表現する題材です。
冷たい風の中にある清々しさや、
自然の力強さを
感じさせる季語として
多くの句に詠まれています。
『北颪』の例句をご紹介

俳句:街道や 大樫垣の 北おろし
読み:かいどうや おおがしがきの きたおろし
俳人名:村上鬼城(むらかみ きじょう)
要約:冬の街道を、
北からの冷たい風が吹き抜ける情景。
大樫の垣根がその風を受け止め、
凛とした静けさが広がります。
冬の厳しさと自然の力強さを
感じさせる一句です。
季語『隙間風』
『隙間風』の意味
戸や壁の隙間から入り込む、
冷たい風を指す季語です。
古い家屋や木造の建物では、
冬になると
この風が身にしみます。
外の寒さと
家のぬくもりの対比が際立ち、
人の暮らしの中に
季節を感じさせる
冬の生活に根ざした季語です。
『隙間風』のコラム
隙間風は、
冬の厳しさの象徴でありながら、
同時に人のぬくもりを
際立たせる存在です。
俳句では、
静かな部屋に入り込む
冷たい風の感触を通して、
孤独や安らぎを
描く題材になります。
日常の中に潜む詩情を
伝える季語です。
『隙間風』の例句をご紹介

俳句:ほのゆるる 閏のとばりは 隙間風
読み:ほのゆるる うるうのとばりは すきまかぜ
俳人名:杉田久女(すぎた ひさじょ)
→ことばあそびの詩唄で久女の句をもっと
要約:閏月の静かな夜、
ゆるやかに揺れる帳の隙間から
冷たい風が入る情景。
時のずれとともに漂う静寂が、
冬の寒さと心の孤独を
そっと映し出しています。
季語『初時雨』
『初時雨』の意味
その冬、はじめて降る
時雨を指します。
時雨とは、
降ったかと思えばすぐ止む、
移ろいやすい冬の雨のこと。
初めての時雨には、
秋の名残と
冬の訪れが交じり合い、
季節の変わり目を告げる
情緒ある天文季語です。
『初時雨』のコラム
初時雨は、
季節のあわいを感じさせる言葉。
冷たい雨が静かに降る中に、
心の寂しさや美しさが宿ります。
俳句では、
旅の途中や野辺の景色など、
移ろう時の儚さを詠む題材です。
冬の始まりを
やさしく伝える季語です。
『初時雨』の例句をご紹介

俳句:旅人と 我が名呼ばれん 初しぐれ
読み:たびびとと わがなよばれん はつしぐれ
俳人名:松尾芭蕉(まつお ばしょう)
→ことばあそびの詩唄で芭蕉の句をもっと
要約:旅の途中、
初しぐれに降られながら歩む自分を、
人々は「旅人」と呼ぶだろう――。
季節の移ろいとともに生きる芭蕉の姿が、
静かな孤独と風雅を漂わせる一句です。
季語『冬の雨』
『冬の雨』の意味
冬に降る冷たい雨を
指す季語です。
雪に変わるほどではないものの、
空気を冷やし、
景色を静かに濡らします。
音もなく降り続くその雨は、
冬特有の静寂と
寂しさを誘います。
寒さの中に
しっとりとした情緒を
感じさせる季語です。
『冬の雨』のコラム
冬の雨は、
厳しい寒さの中にも
どこかやさしさを
含んだ現象です。
俳句では、
冷たい雨音や
濡れた景色を通して、
人の心の静けさや
哀感を詠みます。
冬の風景に淡い彩りを添え、
季節の深まりと内面の静寂を
表現する季語です。
『冬の雨』の例句をご紹介

俳句:冬の雨 火箸をもして 遊びけり
読み:ふゆのあめ ひばしをもして あそびけり
俳人名:小林一茶(まつお ばしょう)
→ことばあそびの詩唄で一茶の句をもっと
要約:冬の雨の日、火箸を手にして
子どものように遊んでいる情景。
寒さの中にも心はやわらかく、
一茶らしい人間味と温かさが
静かににじむ一句です。
まとめ
冬の天文季語は、
澄んだ空と静かな光の中に、
季節の深まりを映します。
月や星、風や雲のすがたに、
自然の美しさと人の心が重なります。
俳句を通して、
冬の空の詩情を感じてみましょう。
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